ウイスキーの世界へようこそ:歴史と5大ウイスキーの基礎知識
単に麦をベースにした蒸留酒ということであれば紀元前のメソポタミアや中国にも記録がありますが、現在のウイスキーにつながる明確なものとしては、スコットランドの王室財務省の記録に残る「1496年」が最初とされてきました。しかし近年では、それ以前のアイルランドの記録も発見されています。さらに「ウイスキー」という言葉が事典に記録されたのは1755年のことです。
ただ、この頃のウイスキーはスコットランドやアイルランドの地酒に過ぎませんでした。ウイスキーが世界的に飲まれるようになったのは、1860年代から80年代にかけてのことです。ブドウに付くフィロキセラという害虫のために、当時一番人気のあったブランデーが作れなくなったこと。そして、癖のあるシングルモルトだけでなく、グレーンウイスキーとブレンドする「ブレンデッドウイスキー」が出現し、安定して飲みやすいウイスキーが提供されるようになったことで、一挙に世界中へ広まりました。
世界5大ウイスキーとは?
一般的に「世界5大ウイスキー」として、以下の5つが分類されます。生産量から見ると、この分類で世界の9割を占める世界的なウイスキーです。
スコッチウイスキーの特徴とおすすめ銘柄
ウイスキー発祥の地、スコットランドのウイスキー。昔はアイリッシュウイスキーの方が売れていた時期もありましたが、アイルランドの内戦や、第二次世界大戦中にアイルランドが自国民への供給を優先したのに対し、イギリス政府は輸出を奨励しました。これによりアメリカ兵が愛飲したことなどから世界中に広まり、スコッチウイスキーがウイスキーの代名詞となりました。
スコッチは6つの産地に分けて語られることが多い
スコッチウイスキーの産地を示す地図
ハイランド (Highland)
スコットランドの北部の地域。40以上の蒸留所があり一括りでは語れませんが、フルボディでピートの燻香がしっかりあるものが多く、北部に行くほどそれが強くなります。
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スペイサイド (Speyside)
50以上の蒸留所が密集している地域。華やかで繊細、甘くまろやかなモルトが全体的な特徴です。グレンフィディックやマッカランもこの地域の銘柄です。
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ローランド (Lowland)
かつては多くの蒸留所がありましたが衰退し、現在は10ほどの蒸留所があるのみ。軽やかで飲みやすいのが特徴です。普通は2回蒸留のところを3回蒸留するのが伝統ですが、現在安定的に営業されている代表例はオーヘントッシャン蒸留所です。
アイラ (Islay)
8つの蒸留所がありますが、ピーティでスモーキー。海辺にあるため海藻から来るヨード臭や潮気が感じられる個性的なものが多く、最近のシングルモルトブームで大いに注目されています。ラフロイグなどが有名です。
⇒ アイラモルトウイスキーの飲み比べページへ
アイランズ (Islands)
各島それぞれに蒸留所がありますが共通する個性は少なく、島ごとの独特な風味が楽しめます。ハイランドパークやタリスカーなどが代表的です。
キャンベルタウン (Campbeltown)
かつてはモルトウイスキーの中心地でしたが現在は3つの蒸留所のみ。ブリニー(塩味)が特徴で、スプリングバンクなどが熱狂的な支持を集めています。
■ スコッチを世界に広めた「ブレンデッドウイスキー」
個性の強いシングルモルトとは異なり、スコッチウイスキーの名声を世界的なものにしたのは、複数の原酒を飲みやすくブレンドした「ブレンデッドウイスキー」の存在です。
世界で一番飲まれているジョニーウォーカーをはじめ、日本でも馴染み深いバランタイン、シーバスリーガル、オールドパーなどがこの分類に入ります。
アイリッシュウイスキーの特徴とおすすめ銘柄
アイルランドがウイスキー発祥の地という説もあり、19世紀後半はスコッチウイスキーよりも隆盛を誇っていた時期もありました。しかし、内戦や大戦中に輸出を控えたことでスコッチに覇権を渡すことになりました。特徴としては一般的に「3回蒸留」を行い、麦芽の乾燥時にピートを炊き込まないため、スモーキーさがなくスコッチよりも軽く飲みやすいのが魅力です。
ジェムソン スタンダード
アイリッシュウイスキーの世界No.1ブランド。香ばしくまろやかな香りと、クセのないスムースな味わいで、ウイスキー初心者にも最適です。
ブッシュミルズ シングルモルト 10年
世界最古のライセンスを持つとも言われる蒸留所。アイリッシュの伝統である3回蒸留を守りつつ、軽やかでフルーティーな甘みが際立ちます。
バスカー アイリッシュウイスキー
トロピカルフルーツのような甘く豊かな香りで、近年日本でも爆発的な人気を誇る新興アイリッシュ。コストパフォーマンスも抜群です。
※その他、タラモアデュー、ティーリング、そしてアイリッシュでは珍しいピーテッド麦芽を使用したスモーキーなカネマラなども人気です。
アメリカンウイスキーの特徴とおすすめ銘柄
アメリカンウイスキーといえば、とうもろこしが主体となっている「バーボン」や「テネシーウイスキー」が定番です。内側を焦がした新品のオーク樽で熟成させるため、バニラやキャラメルのような力強い甘い香りが特徴です。(モーターヘッド アイアンフィストのようにバーボンではないアメリカンウイスキーもあります)
メーカーズマーク
赤い封蝋が目印のプレミアム・バーボン。原料に冬小麦を使用しており、ふっくらとした甘みとまろやかな口当たりが楽しめます。
ジャックダニエル ブラック
テネシーウイスキーの代名詞。サトウカエデの炭で濾過を行うことで、雑味が抜け、非常になめらかな風味に仕上がっています。
その他にも、王道のワイルドターキーや、洗練された味わいのI.W.ハーパー、4種類の原酒をブレンドしたフォアローゼズ、世界中で愛されるジムビームなども世界的な定番として知られています。
カナディアンウイスキーの特徴とおすすめ銘柄
ライ麦と小麦のモルトを使っていることが特徴。もともとはアメリカの禁酒法時代、アメリカへの密輸から発展したという歴史を持ちます。5大ウイスキーの中で最も軽やかでマイルドな味わいが特徴です。
カナディアンクラブ
「C.C.」の愛称で世界中で親しまれるカナディアンウイスキーの代表。クセがなくスムーズな味わいで、炭酸割りとの相性が非常に良いです。
ジャパニーズウイスキーの特徴とおすすめ銘柄
サントリーの山崎やニッカの余市をはじめ、本場イギリスのコンテストでも高い評価を得ています。フロム・ザ・バレル、響、白州などを含め人気が出すぎて、市場では入手困難になっていることが多いのが現状です。
サントリー シングルモルト 山崎
日本のウイスキー発祥の地、山崎蒸溜所の代表作。苺やさくらんぼのような華やかな香りと、甘くなめらかな味わいが世界を魅了しています。
サントリー シングルモルト 白州
森に囲まれた白州蒸溜所で造られる、みずみずしく爽やかな香りが特徴のシングルモルト。キレが良い軽快な味わいはハイボールに最適です。
ニッカ シングルモルト 余市
ニッカの創業者・竹鶴政孝が築いた北海道・余市蒸溜所のモルト。力強く重厚で、潮の香りとスモーキーなピート香が心地よく残ります。
※その他、宮城峡、竹鶴、イチローズモルトなども日本が世界に誇る名酒です。
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参考図書
うまいウイスキーの科学 (サイエンス・アイ新書)
ウイスキーの起源から生産国、地域による分類、モルティング、仕込、糖化、発酵、蒸留、貯蔵などの工程をイギリスの蒸留所の写真を使いながら説明。後半は100を超えるスコットランドの蒸留所のモルトウイスキーの特徴を解説。カラー写真も多く使われているのでボトルの色もわかり、感じがつかみやすい一冊です。
シングルモルトを愉しむ (光文社新書)
292ページの新書版で一部カラーページも有り、ぎっしりと情報が積み込まれています。ウイスキーの歴史、製造工程からスコッチの地域別・蒸留所別の特徴、文化、94の蒸留所の銘柄写真、世界的酒類企業合理化の影響まで、シングルモルトを極めたいなら手元においておきたい一冊。
最新版 ウイスキー完全バイブル
上の「シングルモルトを愉しむ」を書いた土屋守さんが執筆した本。5大ウイスキーの歴史から、人気銘柄、ウイスキーに関する一通りの基本知識が綺麗にまとめられています。
ハイボール&おつまみ事典
ウイスキーだけでなく、ソーダや炭酸系の飲料を使った色々なカクテルとおつまみが、手の込んだものからオイルサーディンの缶詰まで全ページカラーで写真中心に紹介されています。